さいたま市議会議員 てるきな弘志

1.スマートシティさいたまモデルについて

1.1 市民が共感できるビジョンについて

本市におけるスマートシティの取り組みは、環境省のグッドライフアワード、「先進的まちづくりシティコンペ」で国土交通大臣賞、第7回プラチナ大賞での優秀賞・新しい時代のまちづくり賞、また民間企業のインプレスが主催する「Impress DX Awards 2019」でプロジェクト部門グランプリを獲得するなど、公的機関だけでなく民間からも高く評価されております。

しかし、こうした本市のスマートシティの取り組みは浦和美園地域だけの実証段階だからでしょうか、生活実感として全く感じられません。そこでまず、実証から社会実装へのスケジュールとさいたま市全体へどのように展開していくかお示し願いたいと思います。

昨年、内閣府はスマートシティから一歩踏み込んだスーパーシティに挑戦する自治体の公募を行い、4月16日に締め切られ、北は北海道から南は沖縄まで全国31の自治体が応募いたしました。このうち5箇所程度の区域が特区に指定され、大胆な規制改革を行い、世界に先駆けた未来の生活を先行実現する「まるごと未来都市」を目指します。内閣府の狙いは、スーパーシティ構想で自治体を競わすことによって、新しい公共サービスの誕生を促すことにあると言われています。本市も今は住みたい街ランキングで上位に入り、少子化の時代に子どもが増えている全国でも有数の自治体ですが、ともすると、スーパーシティにより地方移住が進み、本市の人口減少が早まる可能性もあります。

スマートシティ、スーパーシティの取り組みを成功させるため、全国の自治体は、サービスの基盤となるデータプラットフォーム、いわゆる都市OSを構築し、そのデータを活用して、新しい公共サービスを創り出しています。そこで、重要なことは都市OSに十分なデータを集めることができるかどうかであります。これまでは、行政が市民の情報を集めることには、個人情報保護の観点から市民にとって大きな抵抗感があり、国も含めてほとんどの自治体において成功していません。オプトイン方式で市民に情報を提供してもらうためには、「あなたの情報は適切に保護されています」「目的外に使用することはありません」というネガティブリストの方法論よりも、スマートシティのビジョンを示し、「情報を提供いただくことで、このようなサービスを提供できるようになります」というようなポジティブなアプローチが、スーパーシティ、スマートシティ成功の鍵であると言われています。行政はそのデータを使って、市民に約束した行政サービスを提供し、さらに市民からは提供された行政サービスに対して改善提案を行い、お互いにサービスの向上を図っていく。今回提案された各地のスーパーシティの取り組みには、そういう新しい行政と市民の関係を構築していくという意欲が感じられます。

本市のスマートシティにとっても、その成功のためには、市民が共感できる具体的かつ簡潔なビジョンを示す必要があると思いますが、ここでお示しいただきたいと思います。

1.2 公共交通分野における実証とMaaSの実現に向けたスケジュール

続いて、公共交通分野におけるスマートシティの取り組みとして、本市においは、新都心地域を中心に、AIデマンドバスや、シェア型マルチモビリティ、自動運転バスなど、新たな交通手段の実証実験が進められています。私たちも会派として、交通不便地域解消のため、AIデマンドバスなどの導入を求めてきましたので、実証実験が進められていることに感謝申し上げます。しかし、どんなにすぐれた交通手段であっても個別に検討していたこれまでの手法では、限られた利便性のもと、収益性が確保できないばかりか、交通事業者、地元住民との調整に、相当な労力と時間を割かれ、市民が求める場所に、市民が求めるモビリティを導入することが困難でありました。これらの交通手段を効率的に運用していくため、一つのサービスとして、切れ目なく利用できるようにすることを、まず考えるべきではないでしょうか。

これまで主張してきた「さいたま市版MaaS」の導入であります。それによって、どのような社会が実現されるのか。さいたま市スマートシティ推進コンソーシアムの資料によると、ライフサポート型MaaS(通称おおみやMaaS)を導入し、シェアモビリティ、タクシー、バス、駐車場を統合し、公共サービスへのアクセスを確保する他、買い物、飲食、観光需要を掘り起こし、賑わいを創出する構想が描かれています。MaaSは交通分野に限定されるものではなく、未来のまちづくりと連動するものと捉えられています。これを実現するMaaSアプリには移動手段の選択、決済は当然として、目的地周辺のショッピングやグルメ情報、クーポンの発行などきめ細やかなサービスが求められます。また、さらなる利用を促すための、サブスクリプションモデルやポイント制の導入、スマホを持っていない人のために、MaaS専用のモバイル端末を開発してもいいかもしれません。そうしたアイデアは民間企業からいくらでも出てくるでしょう。そこで、行政の役割はMaaSオペレーターとして、交通事業者の調整、データプラットフォームの構築、官民データ連携などの調整役に徹するべきであると思いますが、いかがでしょうか。そしてこれらのサービスが市内全域に展開されて、移動に困難をきたす市民がいなくなるのはいつになるでしょうか。MaaSの実現における行政の役割と導入に向けたスケジュールについて、本市の考えをお聞かせください。

2.さいたま市行政デジタル化計画について

2.1 民間力の活用について

行政のDXを推進する6つの法律が5月12日に成立しました。これにより、マイナンバーカードと口座の紐付け、押印廃止、書面の電子化、情報システムの標準化など行政DXの法的な環境が整ったといえます。しかし、DXの本質はD、デジタルの部分よりもむしろX、トランスフォーメーションにあるべきとの意見もあります。つまり、書面の電子化、手続きのオンライン化などデジタルテクノロジーの導入は業者に任せればできることでありますが、導入したサービスを市民目線、ユーザー目線で常に変革していく仕組みが求められています。これには、シビックテックを活用したアジャイル開発の手法を用い、行政主導というよりは、多様な民間の担い手と共に創っていく環境を整える必要があります。そのために、例えば、CIOを民間から採用するなど、行政の側にも民間人材を入れていかなければならないと思いますが、いかがでしょうか。

教育委員会がGIGAスクール推進のために、民間人材を募集したところ、名だたるIT企業のエンジニアが市民のためになるのなら無償でも構わないと多くの応募をいただいたと聞きました。現在、デジタル人材が不足していると言われていますが、そうした志の高い人材は積極的に採用すべきであると思います。今年の3月に策定された「さいたま市行政デジタル化計画」では①窓口手続きのオンライン化、②ICTによる業務効率化・働き方改革、③データ活用・スマートシティ推進といった重点施策が掲げられ、意欲的な取り組みと評価いたしますが、今回のワクチン接種の予約サイトを見ても、民間の力がなければ形式的なデジタル化に終わってしまうような気がしてなりません。

今回の予約サイトについて、アクセスできない、画面がわかりにくいというといった声はあちらこちらで上がっております。開発期間が短かったのかもしれませんが、業者任せで細かいスペックのチェックなどはできていないのではないでしょうか。もしも行政の側に民間のデジタル人材がいれば、これでは大量アクセスに耐えられないとか、この画面ではユーザに伝わりにくい、接種券の電子申請を導入すべきなど、技術的な側面、UI、UXの側面から、開発に関与できたのではないかと思います。たとえ納品までに仕上がらなかったとしても、リリース後に修正を加えながら運用することもできたかもしれません。 行政デジタル化計画では同じ轍を踏んではなりません。そのためにも民間のデジタル人材を戦略的に積極採用してはどうかと思いますが、見解をお伺いします。

2.2 職員の事務負担軽減と意識改革について

「さいたま市行政デジタル化計画」の柱にもなっている職員の業務効率化・働き方改革について、よくお役所仕事と揶揄されますが、公務員はどんなに面倒でも決まった手続きを、正しい手順で行うことに重きを置きがちです。大きな組織において、それを否定するわけではありませんが、現在進んでいる脱ハンコの流れは、そうした面倒な手続きを変える大きなチャンスです。どのようにすれば、今直面している業務を効率的に回すことができるのか、デジタル技術を活用することで、市民にとってもっと使いやすいサービスにできるのではないかと、職員自らが考えることによって、働き方を改革し、それによって生じた時間をきめ細やかな住民サービスに振り向けることも可能となります。また、事務作業の軽減に成功した一人の職員の発想を共有することで、全庁的な負担軽減にもつながります。

神戸市は、阪神淡路大震災を経験し、職員の数が激減しました。少ない職員で肥大化する事務作業をこなすため、職員一人一人の作業効率を上げる必要性に迫られました。その努力が結実したのが、昨年、全国民に交付された特別定額給付金であります。神戸市ではキントーンのローコード環境によって、職員自らがアプリを開発し、交付金の事務作業を効率化できたのです。 最近は、神戸市が採用したようなローコード、ノーコードによるアプリの開発環境が整っております。またRPAもほとんどコーディングすることなしに、パソコン作業を自動化させることができます。本市のDXを推進するにあたっては、RPAを導入した、システム環境を整えたなどの技術の導入だけをもって、DXの推進度を図るのではなく、職員が自ら提案する体制、情報共有する環境を整え、どれほど事務負担が軽減されたか、有益な市民サービスを生み出すことができたかを評価基準とし、DXの中心概念に据えるべきと考えますが、見解をお伺いします。

2.3 全ての人に優しい技術の導入について

DXの推進にあたって、もうひとつ重要な視点として、高齢者や障害者など、デジタルから誰一人取り残さないということであります。本来、デジタル技術は誰でも使えるものであり、高齢者などもその恩恵を受けられなければ、サービスとして不十分と言わざるを得ません。また、逆に高齢者に配慮しすぎてデジタル技術の導入に躊躇をすれば、スマホやパソコン作業に慣れた世代を取り残すことにもなります。つまり誰一人取り残さないためには、ユニバーサルデザインの思想に基づいて、徹底的なデジタル化を推進するべきであります。

例えば、スーパーシティに名乗りを上げている前橋市ではマイナンバーカードとスマートフォン、顔認証技術を使って、セキュアな個人認証を実現し、「まえばしID」を構築。本人確認が必要な行政サービスのほか、交通、教育、医療などの民間サービスもまえばしIDで利用できるようになります。このために、高齢者にまえばしIDの利用に特化したスマホを役所と市民との連携ツールとして無償提供し、デジタルデバイドの解消に取り組むようであります。

本市においてもマイナンバーカードを最大限活用して、生体認証技術との組み合わせで、行政手続きのオンライン化に加えて、窓口での手続きも自動化できないでしょうか。オンライン化は役所に来なくても済むようになる取り組みですが、やっぱり役所に来て、人の顔を見て相談しながら手続きをしたいというニーズもあります。その時に、手ぶらで窓口に来ても、顔などの生体で個人認証ができれば、どんな手続きも完了できる。また、各種相談も、その人のカルテを出して、過去の履歴などを確認しながら相談を受けることができる。他の窓口に行っても同じ説明をする必要がない。こうしたことが実現できれば、誰も取り残さない役所のDXが現実のものとなるのではないでしょうか。オンライン化は「来庁舎ゼロ」。自動化は「来庁するときは手ぶらで」。この二つをセットにして役所のDXを進めてはいかがでしょうか。デジタルデバイドを生じさせないDX推進の考え方について、見解をお聞かせください。

3.安全対策について

3.1 防犯カメラ設置の手法について

神戸市では子どもや女性を狙った犯罪の抑止や早期解決を目的に、各小学校の半径500メートル圏内の通学路に約10台、主要21駅から半径500メートル圏内に約15台などを目安に、2年で合計2000台を配置する予定。記録した映像は市役所の危機管理室で管理します。

神戸市では本市と同じように、自治会などにカメラの設置費用を補助していますが、その台数は2700ヶ所にものぼり、それに加えて、今回、市独自の防犯カメラを2000台設置する計画であります。本市も自治会等に設置費用を補助していますが、過去5年間で設置された台数は40台。市が設置した防犯カメラが10台。令和元年度に公園等に設置された自動販売機併設型の防犯カメラが31台。通学路に3台。これで市民を守ることができるのでしょうか。

埼玉県警の犯罪統計によると、大宮区の犯罪率が13.0。2位の蕨市の9.2を大きく離して1位です。犯罪の種類で見ると、自転車盗難が約3割を占め、路上強盗やひったくりを含めた街頭犯罪は4割にものぼります。防犯カメラの犯罪抑止効果については多くの研究がなされており、すでに実証済みではありますが、その中でも特に街頭犯罪に相対的に高い犯罪抑止効果があると言われています。

昨年設置された自販機併設型の防犯カメラについては費用をかけないでカメラを設置する手法が採用されたわけでありますが、公園だけでなく、神戸市のように通学路、駅周辺などにも同様の手法で防犯カメラの設置を進めることはできないでしょうか。

また、近年はデジタル技術の進展により防犯カメラを設置する様々な手法が導入されています。例えば、加古川市では、子どもや高齢者の見守りにビーコンタグを利用した防犯カメラを約1500台設置しています。東京では、防犯カメラの他、5G通信局、Wi-Fi、デジタルサイネージを搭載したスマートポールの設置が進んでいます。また、車のドライブレコーダーを防犯カメラとして活用するというサービスもあります。

こうした各種のサービスをよく検討し、駐車場や駐輪場などすでに自販機が置かれているような場所では自販機併設型、通学路にはビーコンタグを利用、人のよく集まる場所にはスマートポール、本市の公用車や協定を結んだ廃品回収事業者の車両にはドライブレコーダー利用など、複数のサービスを組み合わせて、本市でも防犯カメラの設置を進め、安全安心のまちを実現するべきだと思いますが、見解をお伺いします。

4.ゴミ対策について

4.1 ネットボックスの設置推進について

今、私は朝のごみ拾いを日課としています。路上のゴミを拾いながら、このような光景にしばしば出くわします。

地域の人たちはゴミステーションのカラス対策に頭を悩ませています。これはネットの中にゴミをきちんと入れなかった住民のヒューマンエラーでしょうか。

市民が区役所にカラス対策について相談すると、ゴミネットをゴミ袋に下に巻き込む。またはネットの端に石を置くなどの対策を指示され、あたかもゴミの出し方が悪いと言われているようです。

ネットの端に石を置いて、カラスが悪戯できないようにしているところもありますが、高齢者は石をどけることができず、困っています。石を置いていても、カラスが隙間からゴミを引っ張り出しているケースもあります。

そこで、カラス対策として、折り畳み式のネットボックスの設置を進めるべきと考えます。そのために、例えば、市が購入したネットボックスの貸し出し事業や、自治会が購入したネットボックスに対する衛生助成金を住民世帯数分に増額するなど、実施してはどうでしょうか。本市のゴミステーションのカラス対策についてどのように考えているのか、見解をお聞かせください。

4.2 戸別収集のモデル地域選定について

ごみに関する課題はカラス対策だけではありません。ごみステーションへの不法投棄、雨風による散乱、ごみ処理に伴う温室効果ガスの排出。街の美観を損ねる課題から、環境問題まで多岐に渡ります。また、高齢化によりステーションまでゴミが出せない家庭も増えております。本市においては、福祉政策として高齢者・障害者のためのふれあい収集が行われていますが、利用者は過去5年で約1.5倍に増加しており、今後もニーズの高まりが想定されます。

こうした課題を解決するため、近年、ごみ収集の有料化や、戸別収集を導入する自治体が増えています。例えば、東京都の台東区では資源ゴミはステーション回収ですが、可燃・不燃ゴミの戸別収集を平成25年から3年かけて区内全域に拡大した結果、ごみ出しモラルの向上や、分別の徹底が図られ、5.5%のゴミ排出量の削減効果がありました。その他、東京都内では品川区、武蔵野市、立川市など多くの自治体で戸別収集が行われています。

本市の総合振興計画によると市民一人当たりのごみ排出量を約6%削減する計画になっておりますが、どのように達成するのでしょうか。実施計画には、3Rへの意識啓発のためのごみスクールの実施、環境学習、ごみ分別アプリの配信、広報誌等の配布によるごみ排出抑制などが並んでおります。どれも市民の環境意識向上のために大切な施策と思いますが、意識啓発に偏っており、効果が見られるまでには時間がかかるように思われます。また、ごみの課題を解決したいという本市の強い意思と決意が感じられません。

本市においても、ごみ収集の方法を検討するべき時ではないかと思いますが、いかがでしょうか。例えば、ふれあい収集の対象者の拡充や、戸別収集のモデル地域を選定し、アンケートをとった上で、事業者とも調整し、全市拡大を図るなど、やれることはまだまだあるかと思います。本市のごみ収集の方法について、このままでいいのかどうか、具体的な見解をお聞かせください。